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デジタル化が当たり前になった昨今に、あえて「書く」という行為を楽しむための文房具を体験する場所があります。
蔵前に店を構えるカキモリは、2010年のオープンから15年、「たのしく、書く人。」という言葉を軸に、文具による体験を届け続けてきました。
その歩みと、これからについて、代表の広瀬琢磨さんにお話を伺いました。

カキモリ外観



代表の広瀬さん

代表の広瀬さん

Q. まずは、カキモリというお店について教えてください。

A. カキモリのルーツは、戦後に祖父が群馬県で始めた文具屋にあります。当時は物資も少なく、万年筆のペン先を交換する仕事からのスタートでした。リュック一つで上野まで仕入れに行き、地元に戻って修理をする。そんな時代です。

その後、高度経済成長とともに事業は拡張していきましたが、時代が進むにつれて、文具も大量消費の流れに飲み込まれていきました。東京で事務用品の卸売業に関わった時期もありましたが、FAXで注文を受けて届けるという業態は、効率化の波の中で限界が見えていました。

そこで改めて考えたのが、「文具店をやる意味」でした。自分自身もこういうカタチであればやってみたいと思えて、お客さんもきっといるだろうという考えから、BtoCの小売として、もう一度ちゃんと文具と向き合うことにしたんです。
その選択の結果として、2010年、蔵前にカキモリは生まれました。

カキモリ内装

Q. 「たのしく、書く人。」というコンセプトには、どんな想いが込められていますか?

A. 効率化やデジタル化は進むべき方向でもありますので、仕事や学校で手書きを無理に頑張る必要はないと思っています。

ただ一方で、日常から「書く」という行為が少しずつ消えていくことにも、どこか寂しさを感じていました。だからこそ、まじめに書くのではなく、「たまに書いてみると、意外と楽しいよ」という入口をつくりたかったのです。

ボールペンではなく、たまには万年筆で書いてみる。
ノートを選ぶ時間そのものを楽しむ。

そうした体験を通して、「たのしく、書く人。」というコンセプトが形になっていきました。

Q. オリジナルの商品を開発するにあたって大切にしていることは?

A. 商品開発の考え方は、途中で大きく変わりました。以前は「お客様の声を反映すること」を重視していましたが、それが必ずしも良い結果につながらないこともあったからです。

愛いけれど使われないもの。
価格を下げた結果、混雑しすぎて大切にしたいお客様が離れてしまうこと。

そうした経験を経て、2020年頃から方針を切り替えました。いまは、「自分たちが本当に欲しいと思えるもの」を作るようにしています。買って使いたいと思えるものをつくる。

キーワードは「愛着」です。買った瞬間だけでなく、使い続けたくなるかどうか。その視点を何より大切にしています。

アーティストの方とコラボしたオリジナルノートがズラリ



オリジナルの万年筆も

Q. オーダーメイドのインクの特徴や開発の経緯は?

A. カスタマイズを考えたとき、最初はペンから発想しました。

かし、ペンは工業製品でロットが大きく、1店舗で扱うには現実的ではありませんでした。そこで辿り着いたのが、インクでした。色であれば、もっと自由に「楽しく書く」体験をつくれるのではないか。そうして、2014年にオーダーメイドインクのサービスが始まりました。

正直なところ、インクスタンド単体では収益性は高くありません。それでも続けてきたのは、体験としての価値が非常に大きいからです。

色を選び、混ざり、目の前で完成する。
そのプロセスこそが、カキモリらしい書くたのしさを体現しているのだと感じています。

2階では、万年筆のインクをオリジナルで作れる体験コーナーも

Q. お店を15年続ける中で印象的だったことはどんなことがありますか?

A. 最も大きな転機は、コロナ禍でした。

遠方や海外からのお客様に支えられていた分、来店が止まった影響は大きかったです。そのとき、「来てもらえないなら、ものを通じてコンセプトを届けよう」と決めました。

オリジナル製品の開発を一気に進め、小売から製造に近い形へと舵を切りました。結果として、海外での反応は想像以上でした。特につけペンがアメリカで売れていることは、正直驚きでした。「書く人なんていないだろう」と思っていた場所で、価値がきちんと届いていたのです。

Q. デジタルシフトしていく世の中で、いま「書くこと」の魅力はどう感じますか?

A. 書くことの魅力は、大きく三つあると感じています。

ひとつは、考えを深めること。
もうひとつは、アイデアを書き出すこと。
そして、人に思いを伝えることです。

ただ、手紙にはルールや義務感がつきまといがちです。だからこそ、もっと軽くていいと思っています。焼き菓子に一言添えるくらいでいい。
それでも、ちゃんと気持ちは伝わるはずです。

Q. 最後に、これから大切にしていきたいことを教えてください。

A. 文具という枠にとらわれず、もう少し広い視点で「道具」と向き合っていきたいと考えています。同時に、日本のものづくりを、きちんと次の世代につなぐ役割も担いたいです。

作り手は確実に減っています。メイド・イン・ジャパンが当たり前でなくなる未来も、遠くありません。だからこそ、海外でしっかり価値を伝え、正当な価格で売り、その利益を作り手に還元することが大切だと感じています。

その延長線として、3〜5年以内にアメリカで店舗を出す構想もあります。

書くスペースを楽しくさせるアイテムも取り揃えています

■今回取材したお店

カキモリ

東京都台東区三筋1-6-2 1F
TEL:050-3529-6390
営業時間:
月曜日 定休日
火曜日 11:00~18:00
水曜日 11:00~18:00
木曜日 11:00~18:00
金曜日 11:00~18:00
土曜日 11:00~18:00
日曜日 11:00~18:00
ホームページ:https://kakimori.com/
Instagram:https://www.instagram.com/kakimori_tokyoshop/

店頭でお待ちしています

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