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蔵前の街を歩いていると、ふと足を止めたくなる静かな存在感を放つお店があります。
革製品ブランド「M+(エムピウ)」もそのひとつです。使い込むほどに表情を変える革と、日常に寄り添うかたち。
その背景にあるものづくりの思想や、街との関係について、代表の村上雄一郎さんにお話を伺いました。

M+外観



代表の村上さん

代表の村上さん

Q. M+の成り立ちについて教えてください

A. 私は、もともと建築の設計事務所に勤めていました。

ただ、設計の仕事は図面を描いて申請までで終わることが多く、実際に“手を動かしてつくる”部分にはあまり関われなかったんです。

その中で、「自分でも、ものづくりをしてみたい」という欲求がずっとあって。入社して3年ほど経った頃に趣味で革製品をつくり始めたら、周りに褒めてもらえたこともあり、「これを仕事にしてみようかな」と思ったのがきっかけです。

最初は完全に独学で、道具も手探りで揃えていました。その後、上司の協力もありイタリアで技術を学び、日本に戻ってきてからM+を立ち上げました。

M+内装

Q. 「M+」という名前には、どんな意味が込められていますか?

A. 「M」は村上のMで、「+(ピウ)」はイタリア語で“プラス”という意味です。

自分ひとりで完結するものではなくて、革を仕入れる人、製造する人、そして使うお客さん。そういった誰かと自分が関わることで、ひとつのものができていくという意味を込めています。

だから、完成品を売っているという感覚ではなくて、使い手のところまで含めて、はじめて完成するものだと思っています。

Q. デザインで大切にしていることは何ですか?

A. 建築のバックグラウンドは、やっぱり影響していると思います。

もともと装飾を削ぎ落として、なるべくシンプルな形にするという考え方の事務所にいたので、自然とそういう方向に寄っていきました。

新しい商品を作る際は、最初に自分でサンプルをつくって、型紙を起こします。そこから、革の選定、裁断、縫製など、それぞれの専門の職人さんにお願いしています。

すべてを一人でやるわけではなくて、いくつもの工程を分業で進めていく形です。製品や素材によってお願いする先も変わるので、その都度、最適なパートナーと一緒にものづくりをしています。

いろいろ試して形をいじることも多いのですが、その度に先人たちがたどり着いた形の完成度に驚かされます。逆にうまくいくときは、すっと新しい形が決まる瞬間があるんです。その瞬間にたどり着けるかどうかが、この仕事の面白さだと思っています。

今も新しい財布の形を考えていますが、時代的にはキャッシュレスが進んでいて、財布自体の役割も変わってきています。

いずれ必要なくなるかもしれないという前提もありつつ、それでも「これくらいのものは必要だよね」と思える形を提案していきたいと思っています。

引き算の美学によって作られた商品の数々

Q. 革という素材の魅力はどこにありますか?

A. 一番はエイジングですね。使うことで変化していくところに魅力を感じています。

木や鉄といった素材でも同じように経年変化はありますが、革は比較的扱いやすくて、場所も取らずに身近に使える素材だったので最初に選んだというのもあります。

ただ、エイジングは人によって好みが分かれる部分でもあります。変化しない綺麗な状態が続くことを好む方もいると思うのですが、自分は時間の流れと共に“変わっていくこと”に魅力を感じているので、その方向でものづくりをしています。

Q. 革という素材ならではの難しさはありますか?

A. 革は一度失敗するとやり直しがききません。穴が開いてしまったら、その時点で使えなくなってしまいます。そういう意味では、非常にリスクのある素材だと思います。

検品もかなり厳しくしていて、少しでも基準に満たないものは正規品としては出さないようにしています。それだけに、ひとつひとつの工程に対する緊張感は常にありますね。

よく「革は3代にわたって長く使える」と言われますが、実際には消耗品でもあります。エイジングしやすいということは、裏を返すと劣化もしやすいということです。10年使っていただければ十分だと思っていますし、使い込んでボロボロになったら、また新しいものを選んでもらえればいい。

あまり“特別なもの”として扱うのではなく、日用品として使い倒してもらうことの方が、このブランドには合っていると思っています。

日常使いしやすいアイテムを幅広く取り揃えています

Q. 蔵前という街について、どう感じていますか?

A. もともとこのあたりは、革製品のメーカーや職人さんが多い地域なんです。材料屋さんや加工の業者さんも近くに集まっているので、ものづくりをするにはとても便利な環境です。私も、独立したての頃は埼玉の新座で開業しましたが、仕入れなどの便利さを感じてこの町に移ってきました。

さらに、ここ数年で個人のブランドやお店が増えて、新しい作り手と昔からの職人が自然につながるような関係もできてきました。

情報も共有されることが多くて、「ここおすすめだよ」とか「困ったらここに頼むといいよ」といったやり取りが日常的にあります。競合として争っているというよりは、ゆるやかに支え合って協力している感覚に近いですね。

Q. M+の製品をどのように使ってほしいですか?

A. 特別に扱うというよりは、日常の中でガンガン使ってほしいですね。

きれいに使っていただくのももちろん嬉しいですが、それ以上に、生活の中で自然に使われて、その人なりの変化が出ていくことの方が魅力的だと思っています。

同じものでも、使う人によって全然違う表情になる。その個別の経年変化まで含めて、M+のプロダクトは完成するものだと考えています。

M+の代名詞ともいえるmillefoglie

■今回取材したお店

m+ KURAMAE

東京都台東区蔵前3-4-5 中尾ビル
TEL:03-5829-9904
営業時間:
現在、営業時間に変動があるため詳しくはこちらをご覧ください。
https://m-piu.com/topics/store/temporarily-opening/

ホームページ:https://m-piu.com/
Instagram:https://www.instagram.com/m_piu_official/

店頭でお待ちしています

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