前原光榮商店の傘を見渡すと、落ち着いた無地から、鮮やかな色彩、花柄や縞模様まで、実にさまざまな傘布に出会います。
同じかたちの傘であっても、どの布をまとうかによって、その佇まいは大きく変わるもの。色や柄はもちろん、織り方や光沢、光を受けたときの表情も、一本の傘の個性をつくる大切な要素です。
そんな前原光榮商店の多彩な傘布は、倉庫で反物として大切に保管されています。
今回は倉庫に並んで出番を待つ傘布の反物を通して、傘になる前の生地が持つ豊かな表情をご紹介します。

傘布は、一本の傘の印象を大きく左右する存在です。
深みのある無地の布は、落ち着きのある端正な佇まいに。鮮やかな色彩の布は、雨の日の装いに明るさを添えてくれます。花や縞などの柄があしらわれた布からは、また異なる華やかさや個性が生まれます。
さらに、近くで見れば、織り方や光沢、色の重なりにもそれぞれ違いがあります。
一見すると似た色に見える布でも、光を受けたときの輝き方や、見る角度によって現れる色の深みはさまざまです。傘を開いたときに生まれる豊かな表情は、こうした布そのものの個性からつくられています。
前原光榮商店の傘の多彩さは、一本の傘になる前の、一枚一枚の布から始まっているのです。

倉庫の棚には、前原光榮商店が扱うさまざまな傘布が並んでいます。
無地、花柄、縞模様。落ち着いた色、鮮やかな色、複数の色が織りなす柄物。同じ棚の中にも、それぞれに異なる個性を持った布が大切に収められています。
傘として仕立てられた状態では、布は美しい曲面を描きます。一方、反物のまま並ぶ姿からは、柄の連なりや色彩の広がりなど、完成した傘とはまた違った魅力を感じることができます。
棚を眺めていると、「この布は、どのような傘になるのだろう」と、まだ見ぬ一本の姿を想像したくなります。
倉庫は、布を保管する場所であると同時に、前原光榮商店が生み出す多彩な傘の可能性が集まる場所でもあります。

倉庫に保管されている傘布は、すべてが同じサイズではありません。巾の広い大きな反物もあれば、その半分の巾の「小巾」と呼ばれる反物もあります。生地を織る織機の違いによって、反物のサイズも変わってくるのです。またダブルの傘布を縦中心で裁断し、縁かけを施した状態の生地も保管されています。
長い布が巻き重ねられた大きな反物には、完成した傘からは想像しにくいほどの迫力があります。ここから必要な部分が裁断され、職人の手によって縫い合わされることで、少しずつ傘のかたちへと近づいていきます。
小幅の布も、品番や色、長さなどが分かるように分けて保管されています。
色や柄だけでなく、布の大きさや残っている分量もそれぞれ異なります。その中から必要な布を正しく選び、次の工程へとつなぐため、一つひとつ整理されているのです。

倉庫に並んでいるのは、まだ傘になる前の布です。
しかし、その色や柄を眺めていると、それぞれの布がどのような傘へと姿を変えていくのか、少しずつ想像できるように感じられます。
端正な縞模様は、すっきりとした印象の一本に。鮮やかな花柄は、雨の日の装いを華やかにする一本に。深みのある無地は、長く使いたくなる落ち着いた一本に。
布が持つ個性と、傘の骨組みや手元が組み合わさることで、一本ごとに異なる佇まいが生まれます。どの布を選ぶかは、単に傘の色を決めることではありません。これから手にする傘の表情や、身に着けたときの印象を選ぶことでもあるのです。

色や柄、織りによって異なる表情を見せる傘布。
その魅力を一本の傘へと受け継ぐためには、職人の手に渡るまで、布を良い状態で保管することが欠かせません。
必要な布を見つけられるように整理し、出番が訪れるまで大切に守る。そうした仕事もまた、前原光榮商店の傘づくりの一部です。
倉庫に並ぶ一反一反の布は、やがて裁断され、縫い合わされ、美しい曲面を描く一本の傘へと姿を変えていきます。
倉庫は、布が静かに出番を待ちながら、次の傘づくりへとつながっていく場所なのです。