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Maehara’s commitment

ケミカルレースができるまで─オリオンレース工業株式会社

わたしたちは「傘」という字に含まれる4つの「人」は、
1. 生地を織る
2. 骨を組む
3. 手元を作る
4. 生地を裁断縫製する
それぞれ4つの分野の職人たちを表していると考えています。前原光榮商店はこの4つの技術を高め、継承してきました。

ケミカルレースができるまで

前原光榮商店の傘が多くの人に愛され続ける背景には、職人たちの技と心があります。今回は「日傘に使われるケミカルレース作り」という工程にフォーカスして、埼玉県のオリオンレース工業株式会社さまにインタビューをさせていただきました。

代表取締役社長 谷川正樹さま

代表取締役社長 谷川正樹さま

私どもの事業は、レースの中でも「エンブロイダリーレース」という分類になります。レースにも色々あって、刺繍レース、編みレースなどがありますが、刺繍レースの中でエンブロイダリーレースというのは大きな機械を使ってあの刺繍をするというレースです。日本では、大正12年が始まりと言われています。その年にヨーロッパから日本の国策として機械の輸入をしてそこから始まったという歴史です。途中、戦争がありまして私どもの会社の創業者である私の父も戦争に行きレース産業は中断しましたが、終戦後の昭和24年あたりから残った輸入物の機械を自力でオーバーホールして再びエンブロイダリーレースの歴史が紡がれていきました。その後、昭和43年に当時東洋レースで工場長をしていた父が独立しオリオンレース工業株式会社を立ち上げました。以来、半世紀以上に渡って日本のレースの歴史をつないできました。

ケミカルレースができるまで

エンブロイダリーレースの特徴は立体感ですね。「繊維の彫刻」なんていう人もいるくらいで、凹凸があり立体感があるんですね。一方で、編みレースっていうのは編んでありますからフラットなわけですよね。そんなに立体感はないんです。その中で、前原さんで使われているケミカルレースは特に立体感があるんです。また、いろんな工程を経て作り、出来上がるまでにも時間がかかりますから高価であるということも特徴です。今では日本のレース産業も自体がもうだいぶ小さくなってきているので作れるところが少なくなって希少価値の高いレースになっています。

ケミカルレースができるまで

お取引の始まりは3年ほど前になります。私どものホームページを見て工場まで来られたのがきっかけです。

初めは傘にケミカルレースを使うなんていうのはあんまり考えてもいなかったんです。日傘に使われるレースというのは価格的にも大量に作って安いイメージがありましたので、ちょっと難しいかなと思っていたら、伝統工芸としての「洋傘」を提供されているということで、それだったら我々も可能性があるなと感じ、協業を始めました。

いろいろお話をさせていただく中で、私たちの業界と共通点が多くあったんです。そういう希少価値がある産業として、絶滅危惧種だけども力を合わせることで可能性が広がっていくのかなと次第に感じるようになりました。じゃあやりましょう! という流れになりました。

私たちとしては、大量にオーダーいただくのはありがたいのですが手作業の範囲が広く対応しきれないこともあるのです。実際に必要な数をすり合わせて、少量でも規格などすべてを手作業で行うため手間はかかりますし高価なものになりますが、それでも私たちの希少価値を認めてくださるのが嬉しいですね。

レースの製造は、まずデザインから始まります。
たとえばアパレルのデザイナーが「こういうレースが欲しい」というところから始まる場合と、“定番品”といってレースの問屋さんが、「こういうレースが売れそうだ」ということで、カタログを作って在庫の中から選ぶという2つの始まり方があります。

企画品では、デザインが決まってもレースを作るうえではいろんな制約があります。絵を描いてできるというものではないわけです。レースの機械にあった形にしていかなければならないので、レースデザイナーという役割の人が調整をします。ですから、全体のデザインを決めるスタイルデザイナーがいて、そのレースの機械に合うように調整するレースデザイナーがいて、デザインが決まったら、その次からがいよいよ私たちの出番です。

レースを作るための素材を調達し、ペーパーデザインの6倍の大きさに製図します。そして、「パンチング」という型紙や見本を修正しながら作っていく工程があって、その後にパンチングで作られたカードを使って大きな機械で刺繍する本生産に入ります。刺繡をした後は、機械と糸の世界ですから、糸が切れたりしたものを補修をしたり、あるいはシャーリングや染色をしたりと、いろんな工程を経て完成品として世に流通できるわけですね。完成品といっても、これも素材ですから、前原さんのように生地と合わせるカスタムをするような場合もあれば、衣料品の縫製工場で縫製するということもあります。

ケミカルレースができるまで

紙に描いた“こういうレースを作りたいよ”という型紙作りをする「パンチング」が一番大事な工程です。技術的にも非常に高いレベルを要求するものです。機械で本生産をしていくための設計図を手作業で針間隔をわずかに詰めたり広めるなど、微妙な加減で風合いを表現する職人の技量が問われる作業です。また、機械が壊れたら直さなくちゃいけないんですが今のデジタル化社会になってないんですよね、われわれの世界は。だから職人さんの技術によって機械の調整をしたり、直したりするわけですね。
機械を作ってるところがないですから、それ壊れたらどうするのかというと自分たちで直すしかないということになっちゃうんですね。なぜかというと、製造元や部品を作っているメーカーもなくなってきちゃったんです。だから本当に綱渡り。私たちは自社だけで完結する伝統工芸ではなく、いろんな分業で成り立ってますから、どこかがダメになったら何もできなくなってしまうんですよね。これは傘の世界も同じかもしれないですけどね。そういう産業いっぱいあります。

ケミカルレースができるまで

個人的な話になってしまいますが、私どもの会社は高齢者がすごく多いんですよ。現時点で75歳を過ぎた後期高齢者が3~4人いて、工場長は90歳を超えています。それでも、今まで築いてきた技能ってのは生きているわけです、大きな技術革新も起こってないですから。長く働けるということは、みんなも幸せに感じてくれていると思ってます。もう75歳を過ぎた人間が何人も現場で働いていますが、はつらつとしているのは嬉しいですね。

私の責任としてもう1つ、私より若い子も何人かいますからね。そういう子たちに対する責任っていうのも果たさなきゃいかんなっていうのがあるんで、それをどうしていくかっていうことも考えています。カンタンに若い子を技能者にするわけにはいかないですから、そういった経緯からも昔ながらの技術を持っている仲間を大事にしています。正直な話、私自身はレースを作るセンスが全然ありません。デザイナーだとか、そういう人たちは本当にレースが好きでやっているんだけど、私はレースの製造における技術的なことをよくわかってない。だけど、うちで働いてる人たちが年を取っても、健康で仕事をして、ハッピーでいられるっていうのを見るのが、私にとって1番やりがいを感じます。

代表取締役社長 谷川正樹さま

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